地平線シャッター

目的
地平線シャッターとは,ピンホール式のプラネタリウムにおいて
地平線を作り出すためのカバーのようなものである.
シャッターをつけた場合の利点としては,より実際の星空に近づく,
夕焼け・朝焼けの再現が分かりやすくなるなどといった点が挙げられる.
地平線シャッターのイメージ図を図1に載せた.

図1 地平線シャッターのイメージ
原理
今回,製作したのは内付け式の地平線シャッターである.
ベアリングが回転することで,天球の回転に対応し,
金属棒の回転(コロ)によって緯度の変化に対応する.
図2,図3参照.
工具
金のこ,万力,カナヅチ,きり,金やすり,プラスドライバー,はさみ
製作方法
*内径40外径47幅7のベアリングを使用した

1.ベアリング取り付け部(金具A)の製作

使用材料
・10×30×1mmの金属板(穴が等間隔で開いているものを使用した)
・植毛紙(植毛布,フェルトのようなもの)
製作方法
  1. 金属板をマイナスドライバーなどでけがく(傷をつけて折り曲げやすくする).
  2. 金属板を切削する.
    切削した金属板を万力で固定して金槌を使ってたたき,折り曲げる.
  3. 金属板に植毛紙を貼り付け,穴部分はきりなどで穴を開ける.

図4 金具A製作方法

2.シャッター取り付け部(金具B)の製作

使用材料
・トタン板
・植毛紙
・木片(型用)
・ねじ
製作方法
  1. トタン板をけがく.
  2. トタン板を切削し,穴をあける.
  3. 木の板などで金属板を折り曲げる際の半円型と,六角形の木型を作る.
  4. 木型を使用し,金槌でトタン板を折り曲げる.
    (トタン板は一枚だけだと強度に不安が残るので二枚折にして使用した)
  5. 植毛紙を貼り付け,穴の部分はきりなどで穴を開ける.

図5 金具B製作方法

3.シャッター部(金具C)の製作

使用材料
・トタン板
・棒ねじ(細長いねじ切りしてある真鍮棒)約20cm
・棒ねじに合う六角ナット(8個)
・植毛紙
・リベット
・針金(できれば黒)
・おもり(釣り用)
製作方法
  1. トタン板をけがき,切削・穴あけをする.
  2. シャッター部の大きさに合わせた半円型の木型を作る.
  3. 2.と同様に木型を使用してトタン板を折り曲げる.(三つ折にして使用した)
  4. 三つの板を合わせて球殻を1/8カットしたものを作る.接合はリベットによる.
  5. 植毛紙を貼り,穴の部分はきりなどで穴を開ける.
  6. おもりなどでバランスを調整し,
    棒ねじを通したときカット部分がほぼ水平になるよう調整する.

図6 金具Cの骨組み

4.組み立て

  1. 恒星半球支持枠に,L字金具を木ねじなどで固定する.
    (直接ねじ穴を開けると恒星半球が痛む恐れがあるためドーナツ型にくりぬいたベニヤ板を貼ってから取り付けた)
    この時ベアリングもL字金具に引っ掛けつつ固定する.
  2. 金具B輪をベアリングに取り付け,ねじと六角ナットで締め付ける.
  3. 金具B輪先端部の穴に棒ねじを通し,更に金具Cを取り付ける.
    シャッターが動かないよう六角ナットなどで固定する.

5.調整

  1. L字金具にビニールテープを巻き,
    ベアリングの外輪と金具の接触および遊び部分を無くす.
    また,ベアリングが天球に対し平行になるようにする.
    (ベアリングのがたつきの原因を無くす)
  2. 金具B輪の底にあけた穴から針金を通しおもりをつける.
    (ベアリングのがたつきを減らす)
  3. 金具Cの植毛紙を切り,ビニールテープなどで地平線の補正をする.

結果と考察

今回作製した地平線シャッターは理論上は南緯45度から北緯45度まで対応可能であるが,
Exの高さが異なるため,緯度を変えると多少の山谷が生じる.
ただ,ドーム内で地平線は観客の頭より下の部分にくるため
多少の段差が生じても問題は無いと考えられる.
北緯37度(仙台)で調整した場合は,北緯45度,南緯15度あたりが限界のようである.
また,ベアリングは地上に対して垂直に近い傾きを見せたとき
(北緯0度にあわせた時)は滑らかにまわったが,
緯度を37度にあわせた時にがたつきが生じた.これはおもりを増やす,
慣性モーメントを増加させる(はめ輪部分から竹串を伸ばして先端におもりをつける,
おもりを二つにわけてそれぞれ針金を延ばした先に設置する等)を行っても直らなかった.
ただし,恒星半球をかぶせた状態であれば,多少地平線がゆれても
星が見え隠れする程度でしか判別できないため,問題ないという結論に達した.
どうしても揺れが気になるという場合はベアリングを2重にする,
更に精度の高いベアリングを追及する,
そのほかの水平機構を考えるなどの方法が考えられる.
参考:
愛知教育大学 天文愛好会CORE
http://phe.phyas.aichi-edu.ac.jp/~phoenix/planet/

Universe : アート空間 - 自作プラネタリウム試作2号機
http://universe.art.coocan.jp/Plane/Plane2.html

日本精工 - ベアリング
http://www.jp.nsk.com/tech-support/bearing.html

設計図面等

シャッター図面(ppt)シャッター図面(emf) 金具B(emf) 金具C(emf)
written by M.Takeda(2008)..

Copyright © 2015 Tohoku Univ.Astronomy Club all rights reserved.